SSブログ

成功できないフィリピンビジネス - SM編





前回記事の続きです。

私は日本人オーナーが主要モール(SM、Ayalaなど)に出店した飲食店で3年以上続いている飲食店は知る限り非常に少ないと思います。この「日本人オーナー」とは、

1. 「一風堂」などの大手日本企業ではない
2. 日本風の名前をつけているけど実は日本の会社ではない(シンガポール出資の会社など)
3. 日本の飲食店をフランチャイズでフィリピンに持ってきているけどオーナーは現地の会社や個人(Coco壱番館など)の飲食店

など、これに当てはまらない個人の資金で出店した飲食店です。

今回はなぜ続かないのかを私なりに考察したいと思います。今日の内容はSM批判とも取れる内容ですが、もう撤退して日も経つのでいいでしょう。あくまでも私の私見なのでご了承ください。

フィリピンのモールで日本人出資の店がほとんど長続きしない理由。基本的には多くが「売上不振」による撤退だと思います。またそれ以外の要因も多々あるということを書きたいと思います。ただお断りしたいのは「成功している店」もしっかりと存在しており、失敗した理由は私も含め、「本人」に起因するものであると思っています。それを前提にお読みください。

私自身SMにMegamall、MOAと2店出店してきましたが、1店舗は上記の通り「売上不振」による撤退でした。しかしもう一店舗は必ずしもそうではありませんでした。今回はSMで私が経験した話を中心に書きたいと思います。ちなみにこの話は一部のSMに限定した話です。地方のSMは当てはまらないことも多いです。大手ではなく、特に個人でSMに出店を計画している人の参考になればと思います。

私のカフェの1号店はPasigにあるスーパーマーケットの一角に2014年10月に出店しました。マニラで初の本格的抹茶カフェということで開店当初はマニラ市やケソン市、遠くはLagunaやCebuなどフィリピンのみならずイギリスから帰ってきたフィリピン人がわざわざ寄ってくれたこともありました。それなりに抹茶ファンには名前が知れ渡っていたみたいです。

すると2015年になるといろいろなところからOfferが届くようになります。SMからはFairview、Manila、Pasig、Caviteなど10数店舗以上から出店Offerが届きました。Gloriettaからも実は話がありました。しかしSMのそれらのお店はCクラス以下をターゲットにしており、われわれの商品は高すぎて売れないと判断し、SMならMOA、Megamall、SM North、SM Auraの4店舗に絞り込んでOfferを待つことにしましたが、なかなかオファーが来ませんでした。そこでSM Auraに売り込みをかけようとこちらからProposalを出しました。上記に書いたSMの各店とこの4つのSMはSM内でも別格扱いされていて、これらは「Supermall」と呼ぶ別格のモールになります。ちょうどAuraの担当者が私のカフェのファンで、導入にすごく積極的に動いてもらい、審査の結果「Supermallに入るのに適した店」という認証ももらったのですが、どうしても空きが無いということで順番待ちとなりました。

その知らせを聞いてちょっとがっかりしていましたが、AuraというSM Supermallで審査が通ったことで他の3店舗に情報がすぐに伝わり、MOAサイドから出店のオファーがありました。私はMOAのスタッフにはすごくお世話になり、最後まで協力的だったので好印象を持っていますが、他のモール、その後出店するMegamallや誘いがあったNorthなどは本当に「低レベル」でした。

何を持って低レベルかといいますと、MOA以外の他のLeasing Managerは平気で嘘をついてきました。彼らの許せないところは、出店場所に関するデータを偽ることです。これは今後出店する人に覚えておいてほしいのですが、SM Supermallsでは「一個人店で一等地」の場所を得るのはできません。断言します。不可能です。はっきりとそれは言えます。一等地とはMegamallでいえばBldg B(ADBに近いビル)の入り口近くやEDSAに面した入り口近くなどです。これらは海外の有名店(鼎泰豊とかPaulとかユニクロとか)しか入れません。どんなにマニラで有名になってもBクラス以下の場所しか選べません。

特にMegamallのLeasing Managerには本当に騙されました。後からわかったことですが、われわれが入居する時はAクラス〜Cクラスの場所は空いていたのにもかかわらず紹介されたのは誰も入居しないか、入居してもすぐに撤退するようなDクラスの場所でした。要は穴埋めみたいな感じです。でも彼らは巧みにこう言います。「この場所の人が通る数は他と比べても遜色ありません。」とか「この場所に出店したら絶対に売上は上がります。」とか・・・。かなり疑いを持っていたのですが、あのMegamallからのお誘いでもあるし、「そこまで言うのなら」と出店してみましたが、やっぱり見事にダメな場所でした。

あまりにも売上が上がらないので、さすがにAdminにクレームをつけました。言っていたことと違うじゃないか、と。するとLeasing Managerはこう言いました。「Minisoの裏の場所はどうですか?ここよりは人通りは多いですよ。」と場所の移転を勧めます。Megamallに詳しい人ならご存知だと思いますが、Misonoとはユニクロのロゴを真似たなんちゃってダイソーみたいな店で、Bldg Bの一番駐車場側にあり、その裏手はMegamallで一番人通りが少ない場所です。そこに移転しろと再三に渡って言ってきます。「明日までに返事をしないと別のテナントが入ってしまいますが、いいですか?」とまで言われました。(その後、別のテナントが入るどころか今現在も誰も出店していません。)彼らにしてみれば売上の上がらないわれわれを最低の場所に追いやって家賃を得て、もっと儲かりそうなテナントに変えたいと思ったのでしょう。もちろん即座にそのオファーは断りましたが。そこまで私もバカではありません。

Leasing Managerも所詮は普通の従業員です。ノルマもあります。空いている場所にテナントを押し込んでレンタル料を取れれば成績になります。だから言葉巧みに誘ってきます。基本的にSMはスーパーマーケットでもテナントでも売れようと売れまいとどうでもいいと思っています。以前の記事でも書きましたがスーパーマーケットでも棚貸しで儲けているので、商品が売れようが売れまいが全然気にしていませんし、ノルマもありません。レンタル料を取れさえすれば彼らは利益が出ます。「場所を埋めること」が一番の目標です。場所を埋めて賃料を取れれば彼らは生きていけるのです。売上があがってそこから得るコミッションはついでみたいなものです。だからどんなに売上が低かろうと、賃料を払ってさえいれば何も言ってきませんし、日本のようにテナントの交代もありません。

このように個人の出店の店は最初から大きなハンデを負います。元々売れそうもない場所を押し付けられるわけですから。今から考えればよくあんな場所を選んだなと自分でも思うくらいです。

SMでの成功が難しい理由はまだまだあります。そんな3等地を掴まされたのに家賃は人並み以上に取ります。MOAの家賃などは当時BGCの家賃と同じくらいを取られました。はっきりと書けませんが、一平米あたり一風堂のラーメン5杯分以上です。入居時には保証金と2ヶ月分の前払いの家賃、合計6ヶ月分を徴収されます。その金額は他でも要求される金額なので驚きませんが、驚いたのは内装工事期間中でした。

彼らは出店前には「内装工事期間中は2ヶ月家賃タダで工事してもいいですよ。」と言ってきたので、何も疑わずそれを信じ込みました。ただし内装工事は「音がうるさく響く工事は禁止」、「ペンキやセメントなど匂いのする工事は禁止」など細かく規定があり、実質夜間工事しか許されません。夜間工事はモールが閉まった夜11時以降からできるのですが、実は夜間工事代金を徴収するのです。確かに家賃はタダでしたが、夜間工事中はタダではなかったのです。契約書には小さく書いていましたが、モールサイドからはひと言もそんな説明はありません。ここが彼らのずるいところです。私の場合、1時間あたり280ペソの工事料が取られました。(一日8時間働いて、毎日工事したとして1ヶ月67,200ペソ取られます。電気代ももちろん別に取られます。)更に驚いたのは、荷物を運ぶ際のエレベーター使用料も取られました。(一回あたり500ペソ)ちなみに、開店した後の話で余談なのですが、食材の配達などが毎日あったのですが、営業時間中は基本的に持ち込みは禁止されます。営業時間前後にしか配達できないのですが、営業時間外は全ての行為にチャージをかけてきます。「タダ」のものなどSMにはありません。

てっきりタダだと思っていた私は最初の請求書を見て愕然としました。店をスタートする前から10万ペソ以上の請求書が届いていたのです。いきなりマイナスからのスタートです。これも余談になりますが、この支払に「聞いていない」と文句をつけて支払いを拒否したりすると、彼らは「借金取り立て人」を店に毎日送ってきます。営業時間内はずーーーーと店の中で活動を見守っています。そして彼らは毎日店の売上から現金で強制的に回収しようとします。営業妨害としか思えません。

さらにSMでビジネスをやるのに厳しいことを付け加えると、毎月売上の5%をコミッションとして彼らに取られることです。POSがオンラインで繋がっていて、ごまかしようにもごまかせない仕組みになっています。それに付け加え、年ごとの家賃が10%上がります。でもテナントサイドはそれに応じて商品の値段を上げることは死活問題なので、簡単に上げられません。だからその値上げを見込んだ価格設定にしなくては利益は年々減るばかりです。

フィリピンの飲食で頭が痛い問題は「シニア割引」があることです。60歳以上にはシニア割引があり、注文した商品のうち、基本的に金額が高い方から32%をディスカウントしなくてはいけません。(トータル金額ではありません。)60歳以上の人がグループに一人でもいたら32%引きとなります。SMに払うコミッションを含めると、37%引きになってしまいます。

これを読んでいただいてSMで商売をするのが如何に難しいかわかってもらえたでしょうか?

でもそれだけじゃないんです。問題はこれから書くことのほうが大きかったです。問題というのは彼らが毎月送ってくる請求書が正確ではないのです。ある月などは電気の使用料が前月と比較して3倍に跳ね上がっていた月がありました。クレームをつけると「内容に問題はない」の一点張りで、話し合いは平行線になり、正確な請求書が来る前にこちらも支払いを一旦停めます。するとどうなるかというと、「前月の支払いが行われていない」という理由でペナルティが加算され、賃料の20%くらいの利子がついてきます。間違った請求書を送ってきて、それを直さないどころか遅延支払いということで利子をつけるって訳がわかりません。払わなければどんどん利子は増えていくばかりです。結局そのプレッシャーに負けて支払いを済ませる=請求書の内容を認めることになるのです。よく考えられた仕組みです。

SMで商売をするというのは一見華やかに見えるかもしれませんが、実態は全く儲からないビジネスです。最初からハンデがあるような場所を押し付けられて「早く取らないと他のテナントに取られてしまう」という文句に騙されて、一等地ではないとわかっていながら出店し、結局お客様がこないという負のスパイラルに陥ります。SMは家賃さえ取れればいいので、出店後は知らん顔です。お客様に店の存在を知らせるための宣伝ポスターを貼ろうものなら、場所によっては月に3万ペソ取られます。

SMでビジネスをする=高額家賃、5%の口銭、10%の家賃の毎年の値上げ、三流の場所への出店、工事期間中も請求される、いい加減な毎月の請求書と高額の遅延ペナルティなどを全て覚悟の上、出店をしなくてはいけません。それに加えて32%のシニア割引などがあり、どんな努力をしても利益を生み出すのには本当に難しい環境だと思います。私には無理でした。

これは全てフィリピン華僑が作り出したビジネスモデルです。他の華僑モールも大差ありません。3等地でも入ってくれるテナントがあればいい顔をしますが、入居後は何もフォローなどありません。さらにいえば退去するときなどもうひどい仕打ちです。(これについては次の記事で詳しく書きます。)

こんなハンデだらけのSMモールのビジネスがどうやったら成功できるのでしょう?個人で出店する方は少なくても潤沢な資金がなくてはいけません。賃料、人件費など毎月の固定費を2年くらいは何も売上がなくても支払い続けられるくらいの資金力は必要です。その間にお客さんを開拓して、当初目標の20%増くらいを達成しないと10%の家賃値上げにはついていけません。

前回の記事に書いたようにフィリピン華僑は自分に「利」があるときはいい顔をしますが、それ以降はどうでもいいのです。

あるフィリピン華僑のお客さんがある日こんなことを言いました。

「フィリピンは下手に発展せずにこのままでいてほしい。フィリピン人が無能な間はわれわれが支配することができる」

まさにフィリピン人華僑をよく表した言葉です。彼らは基本フィリピン人を見下しています。ビジネスを牛耳っているフィリピン華僑に勝てる手段と自信がないとこの国で成功していくのはとても難しいと思います。特にSMなどフィリピン華僑経営のモールにおける飲食業は手を出さないのが得策です。彼らにいいように吸い取られるだけです。

以前行っていたクッキービジネスでもフィリピン華僑の横柄で自分勝手な嫌な面を嫌という程見てきました。私は中華人民共和国に住んでいる中国人と華僑は全く種類が違うものだと思っていましたが、強欲で自分中心の考え方は同じだと最近思っています。遺伝子は同じです。

どんなに立派なマニュアルがあっても、どんなにフィリピンでの経験があっても、どんなにリスク管理が上手な人材がいてもフィリピンでビジネスを成功するのにはそれだけじゃダメです。フィリピン華僑といかに上手に付き合っていくのか、もしくは彼らの影響をもらわずにいかに上手く商売をしていくのかという面はとても重要だと思います。

なぜ成功できないのかという話はまだ続きます。



nice!(4)  コメント(1) 
共通テーマ:仕事

nice! 4

コメント 1

steve

Akiraさん 初めてブログを見せてもらいました。私はマニラで年金暮らしをしていますがフィリピンでビジネスをされているとはご立派です。私は何時もここはお金を稼ぐところではなく使うところだと言っています。それでもAkiraさんの様にここでビジネスをしている方はすごいと思います。頑張ってください。
by steve (2018-12-12 13:01) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。